誰もが地域で暮らせるために
社会福祉法人訪問の家・朋施設長 増渕 晴美
〜これからの課題〜
今年3月、16年間朋のメンバーとして通所されていたYさんが、自宅で亡くなられました。進行していく病気で、ここ10年ほどは、
自分の意志で全く身体を動かすことはできず、鼻腔チューブ、下咽頭チューブ、バルーンカテーテルを挿入し、注入、排痰、
吸引、呼吸状態の観察、排泄の管理等々が必要となっていました。家族は、総出で家業を営んでおり、Yさんは、朋への通所
以外に、ホームヘルパー、訪問看護、移送サービス、ショートステイ、緊急時には朋診療所のドクターへの電話相談、ボラン
ティア、母の知人の助け等、公式、非公式なあらゆるサービスやサポートを受けながら、家での暮らしを維持していました。
言葉も出せなくなり、身体の状態はどんどん厳しくなっているのに、Yさんの気持ちは逆にどんどん外に向けられ、楽しみを見つ
けているようでした。特にステキな男性を見つめ、嬉しそうに笑う顔は、誰が見ても本当に幸せそうでした。おそらく家族の状況と
しては、在宅での暮らしは、とうに限界を超えていたと思います。それでも家族は、何度確かめても、「家族の中で。そして
大好きな朋へ通わせたい。」でした。
私達は二つのことを考えました。一つは、利用しているサービス等のコーディネートをし、現在の朋と朋診療所でできる
限りの支援体制を組みながら、今の生活を支えること。もう一つは、家族による介護が破綻してしまう前に、今のYさんの
精神面を大事にしながら生活できる場をつくっていくこと。その場は医療と福祉が一体になっていなければ存在できないで
しょう。これが整えられたら、おそらく“誰もが地域で暮らせるように”ということが、実現できるのではないでしょうか。
Yさんはいなくなってしまったけれど、共に描いた夢を、多くの仲間たちと、描きつづけていこうと思います。
夢が実現できるまで・・・。
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